食文化概論


(調理師読本・公益社団法人 日本栄養士会 編 2017 P334より)


(1)食文化の定義



文化と文明

文化(Culture)・・・人間が自らの知恵によって創り出してきた、物質的、精神的な一切の成果の総称。

文明(Civilization)…物質や技術に基礎を置く実用的な文化。

道具の使用、火の利用のような、人間生活の向上に直結する技術の発達は、すべての人類に共通の利益をもたらす。

・広義の文化…人類に共通な技術体系の文化(すなわち文明)と、地域や民族によって異なる固有の価値体系の文化がともに含まれるとする。


■人の摂食搾取行動と加工・調理

・生活文化…衣食住など人間の生活行動に関する技術や意識の文化。

・食文化、食生活文化…食物摂取行動に関する文化。

すべての動物は、ほかの動植物を栄養源として摂取。その範囲は、ほぼ一定である。
これに対し、人類は、地上のあらゆる動植物を栄養源として摂取。

穀類、豆、野菜、果実、肉、魚介、乳、卵、海藻、きのこ、など。ときには、昆虫、爬虫類も含む。漬物のなかの酵母、乳酸菌などの微生物も人の食料の一種ということができる。

このような食生活が成り立つ背景には人類だけが行う加工、調理の存在がある。

食材の生産→不要部分を除き食品の形にする→(加工、調理)→食物となる。


■食事の機能と食文化

生命維持機能  

 基本条件…安全性、栄養性、嗜好性。
 制限条件…経済性、簡易性、利便性。

付加価値機能

 生活要素…趣味、娯楽、団らん、体験、流行、交流。
 特殊要素…信仰、節制、行事、保健、医療。


(2)食文化の多様性   



■風土・環境と食文化

1.米と小麦

米…高温多湿、豊富な水分を必要とする。収量多く、連作可能。

・ジャポニカ種   形が丸く、短い。粘り気がある。
・インディカ種   形が縦長、粘りが少ない。世界生産の80%。
・ジャバニカ種   大粒、イタリア、ブラジルで生産。   

麦…冷涼で乾燥した地域に適し、連作困難。

調理特性

                   米                      麦
生産環境       高温多湿地域、連作可能       冷涼乾燥の地域、連作困難
穀粒構造       外皮脆く、胚乳部が固い        外皮固く、胚乳部がもろい 
利用形態       精白して外皮を除去、粒食       製粉して胚乳採取、粉食 
調味の必要性     ほとんど不要               必要  
味の組み合わせ   すべての料理と合う            主に西洋料理 
物理性の特徴     でんぷんによる粘弾性          タンパク質グルテンの粘弾性
タンパク質の栄養   小麦よりアミノ酸スコアが高い       アミノ酸スコアは低い


2.肉と魚

肉…素材の種類が少ない。調理法、味付け、部位、スパイス、ソースの工夫が必要。
魚…種類が多く、日本近海だけで数百種を数える。それぞれ旬の時期がある。

肉は、筋繊維が長く、ナイフが必要。魚は、短く箸でほぐせる。

調理特性         

                      食肉              魚介
種類の多少             種類少ない         季節ごとに種類多い
生産の安定性          計画的に飼育可能       飼育困難、生産不安定
季節性               変動少ない           変動大きい
筋肉の構造            繊維ながく切る必要       繊維短い 
死後硬直と軟化         緩やかに進行          急速に進行
味、においの特徴        おだやか、複合体         特定のうまみ、魚臭成分
調理の必要性          スパイス、ソースで変化      単純、同じ調味で可
加熱の必要性           多くは加熱必要         鮮度がよいなら生食可


3.世界の主作物

・米   日本、朝鮮半島、中国南部、東南アジア、インド南部  →飯や粥にする。

・小麦  ヨーロッパ、ロシア、北アメリカ、、インド西部、西、中央アジア、中国北部 →パン、麺類、ナン。